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ロイヤル オーク ブレスレット

はじめに
ロイヤル オークの一体型メタルブレスレットは時計製造の歴史の中で最も複雑であり、賞賛されてきたものの一つです。この記事ではその歴史的なルーツ、技術的特徴、1972年から2022年までの製造と開発の経緯についてお話しします。

18世紀から女性にとって腕時計はジュエリーの役割を果たしていました。男性においては第一次大戦後に、機能的な面でメンズウォッチが使われるようになりました。レザーストラップは特定のスポーツに向いていないということで、1940年代にはロレックスやオメガがメタルブレスレットを使うようになりました。オーデマ ピゲでは最初のメタルブレスレットは1960年代に登場しました。競合ブランドの場合とは違い、手づくりであることが特徴でした。 ロイヤル オーク 5402のブレスレットは、1972年に手仕上げのスティール素材として、スポーツと洗練されたジュエリーという二つの世界を結びつけました。リファレンス番号344のブレスレットはすぐにそれとわかる特徴的なもので、洗練されたデザインの中、光が「歌う」と感じさせるものでした。 ケースと一体化されたデザインにより「一体型ブレスレット」と呼ばれました。その美しさは複雑性に裏打ちされたもので、「テーパリング」のデザインでは34種以上の形状を含む154以上の部品を使っています。サテン、ポリッシュ、サンドブラストの仕上げを組み合わせたブレスレットno. 344はユニークです。有名なブレスレット専門メーカー、ゲイ・フレール社が製造し、オーデマ ピゲのアトリエで仕上げ組み付けました。2ブレードバックルには小さなカバーがついており閉じた状態を保ちます。その後さまざまなバージョンと専門メーカー(ヴェルタノール、マスポリ、ラスコール、オロリュックス、サントロール...)により、これらの部品も進化しました。 サイズ、素材、仕上げは数えきれないほどのバリエーションが生まれました。ブレスレットが複雑すぎるため、時にはケースの方を合わせるなど様々な工夫が行われました。2017年に発売されたセラミックのバージョンは、素材が非常に硬く製造が難しいため、まさにこの良い例でした。ロイヤル オークの創造性はさらに発展し、1992年には初のレザーストラップが登場。この試みは当初リスキーかとも思われましたが、今では定番となりました。

まとめ

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メタルブレスレットのルーツ

最初の腕時計は女性のためのモデルでした。18世紀から19世紀においては、タイムピースとして時刻を示すよりもジュエリーとしての要素が優先され、多くの場合ダイヤルはジェムセットのカバーに隠されていました。この時代、フランス語では腕時計のことを montres-bracelets(リストウォッチ)ではなく、bracelets-montres(ウォッチブレスレット)と呼んでいました。20世紀になり精度の高いミニチュアムーブメントが開発されても、この伝統は続きました。特にオーデマ ピゲでは最高のジュエリー職人がつくりあげる瀟洒なブレスレットつきのウォッチが好まれ、その多くはジェムセットでほとんどゴールドまたはプラチナ製でした。

 

メンズウォッチの歴史はちょっと違います。20世紀になってやっと、男性は少しずつ時計を腕につけるようになりました。第一次世界大戦の経験により、軍事行動など同時に何かを行う時には取り出さなければ見ることができないポケットウォッチより、腕につけた時計ならばちらっと目をやるだけでより効果的であることがわかりました。しかし女性の場合の傾向と逆に、男性の場合はウォッチの計時機能の方がずっと重要でした。男性が安価なウォッチでもラグジュアリーウォッチでもレザーストラップの方を好むのは、これが理由かもしれません。さらにこれによりレディースウォッチとの違いを際立たせることにもなりました。数十年にわたり、わずかの例外を除いて(例えばプレモデル1530)オーデマ ピゲのメンズウォッチはカーフスキン、ピッグスキン、スエード、またバクーのレザーストラップなどを使っていました。

レザーストラップは柔らかく使い心地が良いように思えますが、スポーツ、特に水上/水中のスポーツには適していません。ケースが防水でもストラップが水に弱いのであれば、どうすれば良いのでしょうか?ロレックス、オメガ、ブライトリングなどのメンズスポーツウォッチでは、1940-50年代にスティールブレスレットをよく使うようになりました。

1950年:‘シークレット’ウォッチ、カバー付 5949BA カバーを閉めると、ウォッチはミラネーズメッシュのブレスレットに変身。キャリバー5/7SB、世界最小。ムーブメントとケース41790。18Kイエローゴールド。1950年にカラカスで販売。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1814。

1917年:八角形ウォッチ 長さを調整できるブレスレットは八角形のケースのサイドラインの延長上に続く。50年後のロイヤル オークでこの工夫が見られる。7リンニュのキャリバー。ムーブメントとケースno.18897。ホワイトゴールド、82個のブリリアントカットダイヤモンドをセット。2017年9月、コペンハーゲンで販売。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1838。

1918年:アールデコ ウォッチ パール、ダイヤモンド、ロッククリスタル、プラチナを組み合わせている。キャリバー 8RLBムーブメントとケース21585。1918年9月にスイスで販売。オーデマ ピゲ ヘリテージ、Inv.1071。

1917年頃:ミリタリーウォッチ メッシュがクリスタルを覆い、戦場での爆発などから守る。ラジウム加工をした数字と針は暗闇でも見える。ケースとダイヤルは署名なし。シルバー。ラ・ショー・ド・フォン、国際時計博物館コレクション、 inv.I-660。

1943年:クロノグラフ ウォッチ プレモデル1533 キャリバー13VZAH。ムーブメントとケースno.45603。ピンクゴールドトーンのダイヤル。スティールと18Kピンクゴールドのケース。1943年、カサノヴァ(ボローニャ)に販売。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1660。

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1960年代

オーデマ ピゲでは1960年代にメンズ、レディースどちらもメタルブレスレットの黄金期を迎えました。これらのゴールドまたはプラチナのブレスレットはル・ブラッシュのアトリエで調整、仕上げが行われケースに取り付けられていました。その前の工程までは独立系の高級チェーンメーカーやジュエラーが担当していました。その中にはマセラ、アントニオーニ、ギウゼッペ・ヴィラ、ポンティ、ハフナー、ギャランティなどがいました。パリからの供給はクリストフォル、ジョルジュ・ランファン、またジュネーブからはジャン=ピエール・エコフェ(パテック・フィリップに供給)がいました。ブレード糸をミラネーゼ編みにした研磨仕上げのほか、ダブルポリッシュのメッシュパターンもありました。エングレービングしたり、タイルやトライアングルを組み合わせたもの、非対称デザイン、豊かな深みを出す彫刻を表面に施したりしたものもあります。

これらのブレスレットはクラフツマンシップの技の見せ所でした。ロレックスのオイスターや、オメガのコンステレーションなどスポーツウォッチのスティールブレスレットとはとても違っています。オメガは1964年にすでに一体型ブレスレット特許 (CH405170)を登録しています。この二つの世界はそれでもオーデマ ピゲのイタリア、フランス、スイスの販売エージェントたちによって融合して行きました。ロイヤル オークのブレスレットは、一見パラドックスのような方法を考案しました。手仕上げのスティールブレスレットをジュエリーブレスレットのような洗練されたスタイルにしたのです。

1963年:アーモンド形のウォッチ8055BC ダイヤモンドで縁取ったアーモンド形のケースがしなやかなブレードブレスレットの上をスライドする。キャリバー2050、ムーブメント88937。ケース30775。18Kホワイトゴールド。1963年に東欧で販売。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.542。

1971年:ブリリアントアワーズ ウォッチ8513 1971年のバーデンバーデンのゴールデンローズ賞を受賞したユニークなピース。キャリバー2050、ムーブメント117945。ケース66765。ホワイトゴールドにダイヤモンドと大きなガーネットをセット。1971年12月、ドイツで販売。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1120。

1965~1975年頃:オーデマ ピゲのモデル モデル8512、8622、8554。見本写真。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1965~1975年頃:オーデマ ピゲのモデル モデル8067、8157、8196。見本写真。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1965~1975年頃:オーデマ ピゲのモデル モデル8514と8545。見本写真。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1972年:オーデマ ピゲのパンフレット(表紙) 葉巻を吸う女性。手首に着けているのは"アラベラ" ハイジュエリーウォッチ、モデル8545。オーデマ ピゲ アーカイブ。

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「ブレスレットの上で光が歌う」

2011年のオーデマ ピゲへのインタビューによると、デザイナーのジェラルド・ジェンタはウォッチの識別にとってブレスレットが重要であることに言及しています。「数センチ、いや数ミリでも見れば十分。全部を見る必要もない。それほど重要なことだ!」と言っています。彼は続けて、ロイヤル オークに関して言えば「高価なムーブメントを収めたスティールの自動巻きのウォッチをつくるということ。ブレスレットはフラットで薄く、しなやかで好まれるデザインであること。フラットなサテン仕上げで光が美しく反射するものであること。腕につけたウォッチは、光がブレスレットの上で歌うようであってほしい!」

ロイヤル オークのブレスレットのデザインは、ケースと同レベルに高級でなければなりませんでした。ジェンタは、フォルムは自然にできたと言います:「デザインボードの上でそのフォルムは当然のように見えた」ロイヤル オーク5402 の誕生に関する記事では、ジュネーブのゲイ・フレール社によるロイヤル オーク ブレスレットのクリエイションについて語っています。ここではスタッズ、ネジ、アタッチメントなど主な技術的特徴とそれらの進化についてお話ししたいと思います。

 

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「一体型ブレスレット」とは正確にはどのようなもの?

ロイヤル オークと言えば、私たちは当然「一体型ブレスレット」だと思っています。でもそれはどういう意味でしょうか?時計業界でそれは明確に定義されていないのですが、この表現の正確な意味はどういうものでしょうか?

1998年に出版された 時計理論 のマニュアルではこの言葉は説明されていませんが、似たようなコンセプトを「ケースに固く溶接したブレスレット」というカテゴリーの中で紹介しています。つまりケースとブレスレットが固定され、互いにロックされ、一つの要素としてデザインされている。これが「一体型ブレスレット」の定義に相当すると思われます。1960–90年代の多くのオーデマ ピゲ レディース ウォッチは、このカテゴリーに相当するブレスレットを使用しています。代表的なものは1971年に導入されたモデル 5403でした。そのデザイナーであるジェラルド・ジェンタはこのブレスレットを「見事」「完璧に一体化している」と評しています。ブレスレットは10個のかなり厚いポリッシュメッシュのコマの幅が徐々に太くなり、ダイヤルへとつながっています。溶接(または一体型させた)ブレスレットの伝統は1990年代まで続きました。ジュエラーのイワン・クンツルは1989年にオーデマ ピゲに入った時、ブレスレットを調整しケースに溶接して固定する作業を、57名のクラフツマンが担当していたことを思い出します。

しかしロイヤル オークはこのように作られてはいません。時計師は4つの側面ネジにより、ケースからブレスレットを簡単に外すことができます。なぜジェラルド・ジェンタは(時計業界の多くの人々も含めて)このブレスレットを「一体型」と言うのでしょうか?答えはウォッチの構造の中にあります。厳密にデザイン的な観点から言うと、ブレスレットの1列目のコマは純粋にケースの一部です。2個のリンクがミドルケースの斜面部分に取り付けられ、ブレスレット側の1列目の可動リンクにつながっています。この解釈には賛否両論があるでしょう。時計師からすれば「ケースはケースだ」と言うかもしれません。この点をとってもロイヤル オークが既存のカテゴリーの境界にこだわっていないことがわかります。

1971年:モデル5403 ポリッシュメッシュの一体型ブレスレットキャリバー2121。見本写真。オーデマ ピゲ アーカイブ。

ロイヤル オーク26320ST、ディテール ブレスレットをケースから外すことができるが、一列目のリンクはケースの一部となっている。「一体型ブレスレット」というのはこのことを指している。2016年、26320STモデル紹介時に撮影された写真。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1971年:5402のケースとブレスレットのかん合 ケースミドルの端は43°の角度で開き、ブレスレットの上につながる。一列目のスタッドを入れる二つの穴が開いている。詳細な図面。オーデマ ピゲ アーカイブ。

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ロイヤル オーク ブレスレットのテーパー

ロイヤル オークのブレスレットは、2つ一組の小さな長方形のリンクでつながったテーパー付の大きなコマで構成されています。最初のロイヤル オーク、モデル5402につけられたブレスレットにはno. 344の番号がついています。最も幅広いコマがミドルケースに取り付けられ、これは25.9ミリあります。最も幅が狭いコマは15.9ミリでそれにつながるフォールディングバックルの幅に相当します。二つの固定用コマの幅の違いはかなり大きく、ほぼ倍近くに相当します。

 

この二つのサイズの大きな違いの秘密は、完璧にデザインされたライン、つまり有名なブレスレットテーパーです。これがうまく行くには、時計師(またはコレクター)は、ブレスレットの側面を指で一度でスムーズになぞることができること。これはブレスレットの上面も同様、完璧にスムーズでなければなりません。

このスムーズな流れをつくるため、ブレスレットno. 344は17から20個、12種類の異なるサイズのコマ(長さにより)を組み合わせています。見た目にもこの「デクレッシェンド」効果は、もしコマをつないでいるリンクが真っ直ぐに並び同じサイズだったら、ずっと薄れていたでしょう。注意深く見れば、そうではないことがわかります。ブレスレットの幅が狭くなるにつれて、コマの幅は3.6ミリから2ミリへと縮小します。バランスを保つため、リンク同士の距離も8.9ミリから 7.1ミリへと減少し、リンクはブレスレットのカーブをなぞります。そのため一つのブレスレットのリンクは、9種類の異なったサイズになっています。1972年に戻りましょう。この時に世界初のスティールブレスレットが登場しました。

1971年:最初のロイヤル オーク ブレスレットのスタッドのスケッチ この図面で、テーパーリンクを留めるスタッドも数種類のサイズを揃えていることがわかる。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1972年:ロイヤル オークの最初のブレスレット このブレスレット344はロイヤル オーク5402ST A26に使用され、ケース67026、ムーブメント127059を使用。1972年6月16日にオーデマ ピゲよりスイス市場(ガメオ ローザンヌ)に納入。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.365。

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とても複雑な製造工程

ジェラルド・ジェンタはテーパーブレスレットは「製造工程が非常に複雑になる」ということをよく知っていました。ブレスレットno. 344

(延長コマ付)は154個の部品で構成されています。コマ20個、リンク44個、ピン75個、ネジ8個(ミドルケースに固定するネジを含む)です。全部で34種類の異なる形状の要素が手作業で調整され、装飾されて組み立てられています。

それぞれのリンクは2個のグルーブピンでコマに「嵌め込まれ」中にそっと押し入れてブレスレットの側面に隠されます。これらのピンはブレスレットの「硬すぎもせず、やわらかすぎもしない」しなやかさのキーポイントとなります。常に摩擦と摩耗に晒され、それは1970年代のブレスレットが50年後の今とても柔らかくなっていることからもわかります。ピンに加え、コマとリンクの上面と底のエッジは回転の動きを助けるようやや丸められ、これもしなやかさを生み出しています。

ブレスレットの表面はミドルケースとベゼルのサテンと同じグレインの繊細なサテン仕上げです。光をスムーズに反射して一連の反射効果を生み出し、「一体型ブレスレットの効果をさらに強調します。両側のエッジはラッピングマシンまたは回転研磨で加工し斜面をつけ、ムーブメントのスティールの面取り部品のようにシャープな光のきらめきが生まれます。ケースの縁に沿ってこの仕上げが続く一方、コマのファセットはサンドブラスト仕上げとして、他の部品とのコントラストをつけています。

テーパーをよりなめらかにするため、1列目のコマの斜面はミドルケースのサイド斜面と揃えています。ただしコマがバックルやクラスプに近づくにつれ、斜面幅は狭くなります。このような「減少する斜面」はブレスレットが手で組まれた後に行われるのですが、なかなか微妙な作業です。

このようにとても洗練されたディテールの存在は、オリジナルの特徴である表面に出したネジ、オーバーサイズのスティールケース、力強いラインにかかわらず、ロイヤル オークに1972年の時点からすでにフェミニンな要素が盛り込まれていたことを示します。これが1976年にレディースバージョンがスムーズに生まれるベースとなりました (最初のレディースモデル誕生の記事を参照)。

 

ロイヤル オークブレスレットの半分の展開図の一部 ブレスレットをケースとバックルに固定するネジとは違い、スタッドをリンクに固定するフルーテッドピンは素材の中に埋められ、取り外すことができない。2012年撮影の写真。オーデマ ピゲ アーカイブ。

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ブレスレットNo. 344は一本一本がユニーク

モデル5402はそれまでのオーデマ ピゲにはない、10年のうちに6,000本以上を製造するなどの記録を塗り替えましたが、ロイヤル オークの誕生時には基本的には手作りのウォッチでした。

1972年に最初のロイヤル オークを組み立てた時計師のフレディ・キャプトは「ブレスレットメーカーとケースメーカーは精度に欠けていた」と当時のことを思い出します。時計師たちはプッシュツールを使って調整をしていました。「それぞれのケースごとにプッシュツールを作らねばならず、それは他のモデルには使えなかった」。つまりカスタマーサービスにウォッチが点検や修理で戻ってきた時、これを分解する時計師たちはケースナンバーの下二桁をそっとブレスレットとベゼルに彫っておき、修理アトリエから戻ってきて再組み立てをする時に正しくマッチするようにしていました。

 

1975年頃:作業机の時計師 ロイヤル オークの誕生時には、時計師は最終調整だけでなくキャリバー2121の調整と組立も行っていた。さらにメタルブレスレットの仕上げも行った。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1972年:ブレスレット344 ロイヤル オーク5402ST向けに開発されたブレスレットno. 344は当時最も複雑なブレスレットだった。154の部品で構成、組み立てられ、手作業で装飾を施し調整されていた。2012年、ロイヤル オーク40周年の際に撮影された写真。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1972年:ブレスレット344 ジュネーブの専門メーカー、ゲイ・フレールが製造したブレスレットno. 344は、ロイヤル オーク39ミリウルトラ シン ウォッチの第一世代に使われた。1980年代の終わりから、徐々にブレスレットno. 944に代わって使われるようになる。ブレスレット総覧オーデマ ピゲ アーカイブ。

ブレスレット344のクローズアップ ロイヤル オーク5402の手仕上げのブレスレットは、あらゆる点においてそれまでのブレスレットとは違っていた。組みつけたケースの番号と同じ番号が彫られているものもあった。コマにAPモノグラムをエングレービングしているものもある。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.365。

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アタッチメント部の進化

最初のロイヤル オークのブレスレットno. 344 は常に改善を続けながら、何度も進化を遂げています。

初期の数年間には、ブレスレットとミドルケースとのアタッチメントに関して3つの大きな進化がありました。最初のバージョンではネジがミドルケースの外側の端、リンクの内側の端にあたる部分にありました(「バージョンno. 1」の図解を参照)。これはすぐに問題であることがわかりました。ユーザーはリンクを90度まで回転させることができ、これはブレスレットのデザイン的流れを壊してしまうものになります。

これを解決するため、カスタマーサービス部門は1列目のコマの下に小さなプレートを溶接し(「バージョンno. 1」の図解)、その回転を抑えました。それから数年はル・ブラッシュに点検で戻ってくるウォッチにこの方法が適用されました。平行して技術部門ではリンクとケースのネジの位置を変更しました(「バージョンno. 2」)。図面によるとこの変更は1974年8月に実施され、これはAシリーズの終わり頃に相当します。しかし変更は徐々に行われたと考えることもできます。

1981年:モデル5402のブレスレット344の進化 1981年、オーデマ ピゲは販売店に、細い手首にもフィットするハーフリンクを使った新しい調整システムを紹介した。より小さいフォールディングクラスプも導入されている。AP News 1981年。オーデマ ピゲ アーカイブ。

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フォールディングバックル

フォールディングバックルはブレスレットの安全を保つ要素で、1909年にパリのジャガー ルクルトが特許を登録したのが最初です。ブレスレットが誤って開いてしまった時に手首から落ちることを避けるための装置です。このタイプのバックルは第二次世界大戦後、スポーツウォッチ、特にスティールブレスレットで広く使われていました。ブレードを閉じる大きなカバーの両側には、長さ調整のための穴が開けられています。しかしオーデマ ピゲではもっと後にフォールディングバックルを採用しています。1960年代以降、プラチナのブレスレットが普及しましたが、それらはクラシックなジュエリーウォッチの留め具システムを使っていました。

スポーツ性をアピールするロイヤル オークのために、オーデマ ピゲは自社初のフォールディングバックルを開発しました。機能は重要ですが、そのデザインはウォッチ全体の雰囲気に合うものでなければなりません。ウォッチを手首に着けている時、2本のブレードはブレスレットの下にきちんと隠れ、その存在を全く感じることがないようにすることが必要でした。リンクの幅の小さなカバーが開いてブレスレットを安全に保持し、同時にアタッチメントシステムを隠し強化していました。このような目立たない方法がロイヤル オークのシグネチャーコードの一つです。1972年以降、フォールディングバックルのブレードの形状と数は様々に変化しました(ダブルブレード、トリプルブレード、カットアウトブレード、APモノグラムロゴ付ブレードなど)。オーデマ ピゲはそのいずれにおいても、これをブレスレットのリンクの下にきちんと隠し、ブレスレットの美しさを最大限にアピールしていました。

1972年:ロイヤル オーク5402ST no.A26、ケースバック側 キャリバー2121、ムーブメント127059。ブレスレット344、T21 タペストリーダイヤル。39ミリ、スティールケース67026。1972年にガメオに販売。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.365。

1972年:ロイヤル オーク5402BA A26のブレスレット344 フォールディングバックルを開けた状態と閉じた状態。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.365。

1977年:ロイヤル オーク5402BAのブレスレット フォールディングバックルを開けた状態と閉じた状態。プライベートコレクション。

1997年:ロイヤル オーク14814BAオープンワークのフォールディングバックル オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1216。

2002年:ロイヤル オーク15202ST (2000), No. 557のフォールディングバックル オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.738。

2004年:ロイヤル オーク 14800TR No. 199のバックル オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.829。

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ブレード バリエーション 5402

コレクターの方々はご存知と思いますが、最初のブレスレットno. 344 のブレードにはGとFの文字をかたどった中にラクダの頭部を描いた登録商標がついています。これはジュネーブの有名なメーカー、ゲイ・フレール社のものです。このシグネチャーの右に素材("STAINLESS STEEL")と原産地("SWISS MADE")が記され、製造年とロット番号が記されています(最初の例の1 – 72)。

シグネチャーの左には"PATENTED"(特許登録済)と記載されています。ただし特許番号まではよくわかりません。小さなカバーのダブルブレード式のバックルは、ゲイ・フレール社の1979年(特許CH63697)の登録以前には現れていません。また"PATENT"(特許)の記載は1970年代半にいったん消え、1980年代始めに再度登場します。

現在存在しているデータからは、何本のロイヤル オーク5402 がゲイ・フレール社のブレードを備えていたかはっきり知ることはできません。遅くとも1975年にはこれがオーデマ ピゲのシグネチャーに置き換えられました。他のサプライヤーが自らのシグネチャーを記すことを希望したからかもしれません…ゴールドケースにはサプライヤーの刻印がつけられていました。スターンはロイヤル オークダイヤルの裏側にその星のマークを刻印していました。その他のシグネチャーは稀でしたがブルガリ、ティファニー、ギュブランなどについてはダイヤルに記載されることがありました。

コレクターの方々にとって興味深いと思われる点があります。1977年、最初のモデル5402BAにはイエローゴールドのブレードが使われたことです。しかしこの素材は柔らかすぎたため、その後のモデルにはホワイトゴールドのブレードが使われました。



1972年:ロイヤル オーク5402ST A26のフォールディングクラスプ ゲイ・フレール社のシグネチャー最初のバッチ "1-72"。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.365。

1975年:ロイヤル オーク5402ST No. B1303のフォールディングバックル オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1222。

1977年:ロイヤル オーク5402BAのフォールディングクラスプ 初期のイエローゴールドのフォールディングクラスプは、すぐにより堅牢なホワイトゴールドのバージョンに切り替わった。

1978年:ロイヤル オーク5402BA No. 192のフォールディングクラスプ 初期のイエローゴールドのフォールディングクラスプは、すぐにより堅牢なホワイトゴールドのバージョンに切り替わった。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1073。

1978年:ロイヤル オーク5402SA No. 286のフォールディングバックル オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1446。

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キャップ バリエーション 5402

小さなカバーはブレードロック装置を隠すためだけでなく、安全性を守る役割がありました。閉じた状態を保つため、リンクピンのところの溝の中に二つの小さなキャッチスロットがありました。つまりカバーが閉じている限り、ブレードは開かないようになっていたのです。

モデル5402のカバーも進化しました;当初はAUDEMARS PIGUETとフルレターで記載されていましたが、数年後APモノグラムロゴに置き換えられました。アーカイブにはこの変更期日は記されていませんが、カスタマーサービス部門の時計師たちは、フルレターのカバーは5402のBシリーズの時(つまり1975年から1976年)に徐々に消えていったと語っています。

1972年:ロイヤル オーク5402ST A26のブレスレット344のカバー オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.365。

1975年:ロイヤル オーク5402ST No. B1303のブレスレット344のカバー オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1222。

1975年:ロイヤル オーク5402ST No. B1303のブレスレット344のカバー オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1222。

1978年:ロイヤル オーク5402SA No. 286のブレスレット344のカバー オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1446。

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ブレスレットNo. 344の後継モデル

モデル5402の後、ブレスレットno. 344はいくつかのロイヤル オーク“ジャンボ”モデルに使われました。特に 4187 (1979年)、そして最初の極薄なロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー、モデル5554 (1984年)、そしてその後のバージョンの25624 (1985年)、25654 (1986年)、25636 (1986年) などです。

1981年にこのブレスレットは最後の大きな進化をとげました。市場の声とカスタマーサービスの要望により、オーデマ ピゲは細い手首のための小さなフォールディングバックルを導入しました。そしてリンクを溶接した「ハーフコマ」により、長さを微調整できるようにしたのです。ただしこの二つの改善は、システムが非常にデリケートなものであったため、あまり使われませんでした。次の世代では「1コマ半」に置き換えられました。これは50%大きいコマで、これによりブレスレットサイズを微調整することができました。

1980年代の終わり頃、ゲイ・フレール社が製造していたブレスレットno. 344は、no. 944に置き換えられます。これを製造したのは小さな時計製造の町ル・ロックルにあるヴェルタノールでした。カバーに代わりスライドするリンクを使った新しい開閉システムが導入されます。ブレスレットno. 944は前のものとサイズはほぼ同じでした。こうして多くの パーペチュアルカレンダー付ロイヤル オーク モデル、上記のモデル25654または25636、そして25686 (1989年)、 25687 (1989年)、25694 (1990年)54または25636、同様に25686 (1989年)、25687 (1989年)、そして25694 (1990年)などは順次ブレスレットno. 344、そしてno. 944を備えて行きました。

5402ダイヤルでAPモノグラムロゴが6時位置から12時位置に移ったように、変更は漸次行われ、数年をかけて移行したと思われます。その中で、いくつかのモデルは最初からブレスレットno. 944だけを限定的に使っていました。その例がロイヤル オーク “ジャンボ”ジュビレーモデル 14802 (1992年)です。後継モデルの15002 (1996年)、2000年以降の15202モデルと派生モデル15201(2011年)も同様です。

2012年、コレクションの40周年アニバーサリーの機会に、ブレスレットの新しい世代が現れました。15202はこの時からブレスレットno. 1240を使い、その後継モデル15205 (2015年)も同様です。ヴィルナーヴのマスポリが製造を担当したこのエルゴノミックなシステムは、ダブルフォールディングバックルで二つの内向きプッシャーで開閉します。2005年以降モデル15300に使われた(ブレスレット1220、ヴェルタノール)

ブレスレットno.34と944は簡単に差し替えができたので(手作業の調整は必要でしたが)、カスタマーサービス部門は時に大きく損傷したno. 344を944に置き換えることがありました。この作業は2020年からクラシックパーツプログラムにより管理されることになりました。できるだけオリジナルの344に近い形でブレスレットを修理するようになります。

ロイヤル オーク"ジャンボ" ブレスレット344、944、1240 三世代のブレスレットの違いは主に開閉システムにある(カバーとフォールディングバックル)。 左から右: 左:1978年販売のロイヤル オーク5402BAに使用されたブレスレット344。 中央:1995年製造・販売のロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー25810OR (ピンクゴールド) no. 358に使用されたブレスレット944。 右:2020年製造のロイヤル オーク15202BC(ホワイトゴールド)no. K3912に使用されたブレスレット1240。 オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1073、1213、2071。

1981年:モデル5402のブレスレット344の進化 1981年、オーデマ ピゲは販売店に、細い手首にもフィットするハーフリンクを使った新しい調整システムを紹介した。より小さいフォールディングクラスプも導入されている。AP News 1981年。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1990年頃:ブレスレット944 1990年代の終わり頃、ブレスレット944が徐々にゲイ・フレールのブレスレット344 にとって代わる。新しいブレスレットはル・ロックルのメーカー、ヴェルタノールが製造。ブレスレット登録簿。オーデマ ピゲ アーカイブ。

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多くのバリエーション、ブレスレットの繁栄

ロイヤル オークはオリジナルの形を保ちながらも進化を続けてきました。コレクションが拡大するにつれ素材、ジェムセットバージョン、特にサイズの変化などが組み合わされて行きます。1976年に新たに登場した29ミリに続き、35ミリが翌年に登場。1980年には26ミリと30ミリ、1983年に36ミリ、1984年に33ミリ、1997年に40ミリ、2012年に37ミリと41ミリ、2019年に38ミリ、2020年に34ミリが登場します。

これらのバリエーションにはその度に新しいブレスレットが作られました。1976年にすでにゲイ・フレール社のブレスレットno. 424 がレディースのスモールサイズに使われていました。29ミリの8638と6009、また30ミリの6008、6013、6020、6033、6035です。

ブレスレットno. 477(とその後継モデルno. 789) は10,000本以上を製造し、ロイヤル オークの歴史の中で最も多いブレスレットとなっています。1977年にすでに35ミリのタイムピースに使われていました:4100, 4120, 4153, 4275, 4331, 6023, 6036, 6037, 6038, 6039, 6040, 14486です。1983年からはロイヤル オーク36ミリに使われます:4332、5572、5581、5584、5658、5595、56123、56124、5594などです。1985年にはロイヤル オーク56255など33ミリのバリエーションにこのブレスレットが使われ、1990年代にはno. 789(ゲイ・フレール社製造、後にGTF)がこれに置き換わりました。サイズも開閉方法も前のものとほぼ同じです。ブレスレットno. 789も14700 のラインに使われました。14790 (36ミリ)を含み、小さな15000 (33 ミリ)、また25800 モデル(33ミリ)も同様です。ブレスレットno. 789ではミラーポリッシュのリンクを使っていました。これは一本のブレスレットで125以上のアングルを手作業で仕上げるデザイン的価値の高いものです。

このように細かく見てくると、オーデマ ピゲが様々なサイズのケース(33ミリ、35ミリ、36ミリに同じブレスレットを組み合わせてきたという、あまり知られていない驚くべき事実が明らかになります。なぜ、そしてどのようにこのような異なるサイズの部品を調整したのでしょうか?これはブレスレットの非常に複雑な構造により説明をすることができます。1980-1990年代の時計師たちは、ブレスレットの幅よりもケースラグのテーパーを調整する方が良いと思っていました。歴史家とコレクターたちには、これはケースの形状をブレスレットに合わせる(その逆ではなく)という驚くべき事実ということになります!

 

1977~1979年:ロイヤル オーク8638バックルのバリエーション 女性の手首のサイズに合わせるため、モデル8638のバックルは少なくとも3つのバリエーションがある。左から:ロイヤル オーク8638ST no.370 (1977年)、ロイヤル オーク8638BA no.1 (1977年)、ロイヤル オーク8638SA no.671 (1979年)。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1871、1873 、381。

1976年頃:mブレスレットNo. 424の識別票 8638モデルのためにデザインされたブレスレットno. 424はその前の344を変化させ、幅をずっと狭くしている。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1977年頃:ブレスレット477の識別票 モデル4100のためにデザインされたブレスレット477は35ミリ、36ミリ、33ミリのロイヤル オークに使われた。1990年代にブレスレット789がこれに代わった。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1990年頃:ブレスレット789の識別票 1990年代にブレスレット477に代わりブレスレット789が登場。2000年代の初めまで、33ミリから36ミリのロイヤル オークの12モデルほどに使用された。オーデマ ピゲ アーカイブ。

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ゲイ・フレール社からGTF、そしてセントロールへ

1970年代の終わりから1980年代にかけてロイヤル オークの名声が高まるにつれて、オーデマ ピゲはブレスレットの供給を増やすことにしました。共同設立者の孫であるジャック=ルイ・オーデマはマジョーレ湖のイタリア側にある小さな町セスト・カレンデにあるメーカー、ラスコールのアトリエを訪ねました。1921年創立のラスコールは、創立者のピエトロ・フォンタナと息子のフェルナンドが経営していました。オーデマ ピゲと同じように先祖のノウハウを継承する家族経営のメーカーでした。フェルナンド・フォンタナは他にも自社メーカーをいくつか作り、そこでロイヤル オークのケース 8638 を1976年から製造していました。

1980年からラスコールはブレスレットno. 516を製造。これはミニチュアのロイヤル オークバージョン(26ミリ)向けでした。それに続きモデル6007、6010、6012、6019、6027などを製造。その後もっと小さなブレスレットno. 677と696 を33ミリのロイヤル オーク(モデル56143)向けに作りました。1985年からはジェムセットのバリエーションが増えます。モデル56199(33ミリ、ブレスレットno. 715はブリリアントカットダイヤモンドのフルパヴェ)、そしてブレスレットno. 593(サファイアとダイヤモンドセット)、さらにno. 726、727、821などが続きました。

1986年、ラスコールはGTFと社名変更しました。そして徐々にロイヤル オーク ブレスレットの主要サプライヤーとなります。クラシック バージョン(996、1105、1110、1111、1120、1185、1197、1205、1220、1424、1516)だけでなく、ラッカーリンク(725–727)、ポリッシュ(963、 1004)、ジェムセット(1007、1114、1115、1190、1208)、ミニチュア (1100)も製造するようになります。最初のロイヤル オークオフショアも手がけました。

ラスコールの製造が増えるのと平行してゲイ・フレール社での製造は徐々に減って行きました。ゲイ・フレール社では1980年代から1990年代にかけてロイヤル オークのブレスレットが少し (692、708、994、995)作られており、特にバゲットカット ジェムセット(861)が作られましたが、その後彼らの最大の顧客であったロレックスが1998年にこのメーカーを買い取りました。 オーデマ ピゲではそのほかに時々フランス語圏スイスのヴィドゥデというジュエラーに、ダイヤモンド、エメラルド、ルビーを組み合わせたハイジュエリーブレスレットの生産を発注していました(8054、8027、8081、8083、9031、9042)。しかし少しずつオーデマ ピゲの方でも社内にそのためのアトリエを整備し、ジュエリーウォッチ (8042、9179など)のブレスレットについては殆ど社内で作るようになりました。

2020年以降は、貴金属のロイヤル オークケースを製造した後、1991年にオーデマ ピゲの傘下に入ったジュネーブのセントロールが、徐々にゴールドブレスレットも製造するようになります。スティールのバリエーションのノウハウもマスターするようになりました。ただ大部分はまだヌワルモンのオロリュックスなどの専門メーカーが供給していました。

1990年代半ばにはトリプルブレードのバックルが最初のロイヤル オークオフショア、モデル25721のフィットを改善するために導入されました。このモデルは300本から500本がまだクラシックシステムを使っていたのです。このイノベーションは他のコレクションにも徐々に広がって行き、2000年に入る頃にはロイヤル オークには広く浸透していました。

 

1980年頃:ブレスレット516の識別票 ロイヤル オーク26ミリ向けのブレスレット。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1985年:ロイヤル オーク56199CA 33ミリ。715個のブリリアントカットダイヤモンドをセット。見本写真。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1985年頃:ブレスレット593の識別票 サファイアとダイヤモンド。オーデマ ピゲ アーカイブ。

2005年頃:ブレスレット9179識別票 ブレスレットはバゲットカットダイヤモンドのフルセット。オーデマ ピゲ アーカイブ。

2005年頃:ブレスレット9179識別票 ブレスレットはバゲットカットダイヤモンドのフルセット。オーデマ ピゲ アーカイブ。

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スティールの6倍硬い - セラミック

同時にオーデマ ピゲは、ロイヤル オーク セラミック ブレスレットを導入します。2007年、オーデマ ピゲはバンゲルター ミクロテクニック社と提携します。ビエンヌとベルンの間のアーベルグという小さな町にあるこのスイスの家族経営のメーカーは、すでにセラミック製 ロイヤル オークのベゼルとケースを納入していました。それまで、このように複雑でスリム、デリケートなブレスレットはセラミックのような硬い素材で作ることはできないと思われていました。素材を比較するとセラミック(約1300ヴィッカース)はスティール(約200ヴィッカース)より6.5倍硬いことになります。ここで思い出してほしいのは、スティールが18Kゴールドより30%硬いだけであっても、スティールでブレスレットを製造することはすでにハードルの高い技術的チャレンジであったことです。この目標はそれでも2017年に達成されました。ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー26579CEで実現したのです。

2017年にはすぐにオープンワークバージョン26585CEが続きました。そしてホワイトセラミックの26579CB(スティールの約9.25倍硬い)。同様にトゥールビヨン26522CE、ダブルバランスホイール15416CE、トゥールビヨン クロノグラフ26343CEなど、他のコンプリケーションモデルが続きました。

2017年:ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー 26579CE パーペチュアルカレンダー:曜日、デイト、月、ムーンフェイズ。ウルトラ シン、自動巻きキャリバー5134 (4.31ミリ)、ムーブメント961120。ブラックセラミック ブレスレット1225。ブラックセラミック、41ミリケースJ37062。このウォッチは2019年にオーデマ ピゲ ヘリテージ コレクションの一部となった(inv.1913)。

2018年:ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー 26579CE パーペチュアルカレンダー:曜日、デイト、月、ムーンフェイズ。ウルトラ シン、自動巻きキャリバー5134 (4.31ミリ)。ホワイトセラミック ブレスレット1225。41ミリ、ホワイトセラミックケースJ37062。2018年、ウォッチ発売時の写真。

2018年:セラミックブレスレット1225のサテンブラッシュ 平らなステンレススティールのプレートの上にエングレービングワックスで固定したブレスレットを、紙やすりを使ってサテンブラッシュする。ブラックセラミックはとても硬いのでこの手作業はかなり労力を要する。オーデマ ピゲ アーカイブ。

2018年:セラミック部品の炉 セラミックパウダーを高温で焼く。溶けたものを冷やして固まらせる。加工と装飾にはダイヤモンドパウダーチップの道具を使用。バンガーター アトリエ。オーデマ ピゲ アーカイブ。

2018年:セラミックブレスレットリンクの製造 セラミックブレスレットの製造に必要な多くの工程は全て、高い精度と器用な手先を必要とする。バンガーター アトリエ。オーデマ ピゲ アーカイブ。

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最初のレザーストラップ

レザーストラップの役割は一見、それほど重要に見えないかもしれませんが、ロイヤル オークの歴史の中で実は非常に重要な役割を果たしてきました。最初の20年間、この八角形の有名なウォッチはメタルブレスレットだけを使っていました。業界の純粋主義的な人々はこの伝統を決して変えてはならないもの、聖なるものと考えていたようです。記録によると1978年、ロイヤル オーク クォーツウォッチは八角形のベゼルと機械式ムーブメントをやめて、テーパー付メタルブレスレットだけを維持しました。(下記記事を参照:反逆児から真のコレクションへ)。

1992年、ロイヤル オークは初めてレザーストラップを使いました。モデル14800は賛否が分かれたため、当時共同経営者だったスティーヴン・ウルカートとジョルジュ-アンリ・メイランは「ジュネーブ以外の」独立スイスデザイナー、ジョーグ・イゼックにデザインを頼んだのです。20種ほどの素材とダイヤルのバリエーションをもつユニークなロイヤル オークはオリジナルのデザインコードを保ちながらも自由に、ダイヤル、針、ラグをデザインしていました。ケースの斜面は中心がくり抜かれ、ラグのようなもので囲み、ストラップが可動ピボット軸のようなもので取り付けられているように見えました。注意深く見ると、ブレスレットはミドルケースの底部とネジ締めの長いプレートの間に挟まれていることがわかります。

この構造はその後いくつかのモデルに採用されました。ロイヤル オーク14890 (1994年頃)、14891、14916、66800(1990年代半ば)です。ロイヤル オーク オフショア のいくつかのモデルはこのデザインを採用し、ストラップをクラシックなバネ棒でさらに支えています。コンプリートカレンダー25808 (1996年頃)、モデル25807 (1996年頃)、25770 (1997年頃)、またアーノルド・シュワルツェネガーと提携したオーバーサイズモデル ("End of Days" 25770SN(1999年)、T3 25863(2003年)、"レガシー" 26378(2010年)などです。

 

1992年:ロイヤル オーク初のレザーストラップ ジョーグ・イゼックのデザインによるモデル14800は、ロイヤル オークコレクションにレザーストラップをもたらした。ケースはカーブしてラグの形を想起させるが、ストラップはケースの裏のプレートに取り付けられている。1972年9月の宣伝パンフレットより。オーデマ ピゲ アーカイブ。

1995年頃:ロイヤル オーク14800BA レザーストラップを組み合わせた初のロイヤル オーク。モデルモデル14800は10以上のバリエーションに展開され、コレクションのデザインコードをかなり自由に解釈したものもあった。オーデマ ピゲ アーカイブ。

2004。ロイヤル オーク14800TR, no.199 1992年に発売され、10年以上にわたり製造が続いたロイヤル オーク14800は初のレザーストラップモデル。デイト。自動巻きキャリバー2225、ムーブメント557692。36ミリ、ケースD40087、18Kピンクゴールドとタンタル。2004年にスイスで販売。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.829。

2004。ロイヤル オーク14800TR no.199、ケースバック側 ブレスレットを固定するため二つのメタルプレートがネジ留めされている。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.829。

1996年:ロイヤル オーク オフショア25808ST no.94 コンプリートカレンダー:窓表示の曜日と月の表示、デイト針。キャリバー2127/2827。グリーンのプチタペストリー ダイヤル。38ミリ、ケース no.D75395。このプロトタイプはモデル発表時に紹介された。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.613。

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ダブルスタッド式のレザーストラップ

2000年に入り、ドイツ市場の物流を担当していたディーク・ヴェッテンゲルがストラップの取付を見直すべきと提言し、スケッチを提案しました。ル・ブラッシュでは1999年にデザイナーのクロード・エンメネガーがジャクリーヌ・ディミエとエマニュエル・ギュエからデザイン部門を引き継いでいました。彼がドイツのエージェントのデザインをベースに開発した取付システムは、ロイヤル オークのオリジナルデザインにより忠実なものでしたが、より複雑でもありました。レザーをカットして、ストラップの一列目の二つのメタルスタッドをそこにはめ込み、全体を2本の長いネジで固定します。これにより前のバージョンのラグ(またはフェイクラグ)をなくすことができます。もっと重要なことはミドルケースを全く変更しなくて良いことで、レザーもメタルも使うことができます。この時から時計師は、レザーストラップとメタルブレスレットを相互に付け替えることができるようになりました。

この仕様は2001年に初めてロイヤル オーク オフショア25940SK(ラバーストラップとベゼル)で導入されました。翌年のロイヤル オーク シティ オブ セイルス 25979限定モデルはそのラバーストラップをコレクションのダブルスタッドのフレキシブルストラップと交換することが可能でした。2003年、オーデマ ピゲのニューヨーク ブティックのオープニングで、限定モデル26014を発表。これは初めてのブラック ロイヤル オーク(ブラックPVD加工)であると同時に、初めての2スタッド式レザーストラップを使ったモデルでした。フランソワ-アンリ・ベナミアスはこれにより、米国市場にさらに強いインパクトを与えました。彼が2012年にAPグループのCEOとなった時、レザーストラップはロイヤル オークコレクションのあちこちで使われていました。

2004年、ロイヤル オーククロノグラフ26022は、レザーストラップと交換性のある初の非限定モデルとなりました。その翌年、レザーストラップと交換性のないクラシックなモデル14790をロイヤル オーク15300に置き換えました。メタルブレスレットとレザーストラップの両方が付属し、その後継モデルの15400(2012年以降の派生モデル)と15500(2019年以降の派生モデル)もこのシステムを継承します。じきにほぼ全てのロイヤル オークのバリエーションはこのオプションで発売されるようになります。クロノグラフ(2006年からの26068、2011年からの26557、2012年からの26320と26128、2017年からの26331 、2021年からの26239など)。2006年には、デュアルタイム(26120) とダブルトゥールビヨン クロノグラフコンプリケーション(25977、そして2007年からの26116、2010年からの26377と26039 など)にレザーストラップが導入されました。2008年には パーペチュアルカレンダーモデル(26252)に導入されます。2010年にはイクエーション・オブ・タイム(26603)、ロイヤル オーク デイデイト(26330) 、新しいオープンワークのバリエーション15305もレザーストラップを採用しました。2012年にはグランド コンプリカシオン(25990、26065)もこのトレンドの仲間入りを果たしました。

現在のコレクションのモデルでは、レザーストラップがメタルブレスレットの代替となっています。一方、限定モデルでは時々、レザー(またはラバー)ストラップのみという場合もあります。ロイヤル オーク サチン テンダルカー クロノグラフ 26161OR(2008年)、QEII Cup 2009 (26277)、ロイヤル オーク タキシード15154 と77220(2010年)、レオナルド・ メッシモデル26325OL(2013年)、QEII Cup 2015シリーズ、モデル26327TIなどです。

1990年頃:最初のレザーストラップ(2個のスタッド)をつけたロイヤル オークのスケッチ 当時オーデマ ピゲのディストリビューションを担当していたディエーク・ウェテンゲルによると、このスケッチはレザーストラップの新たなロイヤル オークをデザインするという彼の依頼により、ルイジ・ヴィナンドが制作したもの。ダーク・ヴェテンゲルよりオーデマ ピゲに渡されたスケッチ。オーデマ ピゲ アーカイブ。

2001年:ロイヤル オーク オフショア25940SK 2個のスタッドで固定したラバーストラップの初のロイヤル オーク オフショア。メガタペストリー (または エクストラ グランドタペストリー)ダイヤルの初のモデル。クロノグラフ、デイト。キャリバー2326/2840。42ミリのプロトタイプE39521, no.2250、スティールとラバー、ムーブメントなし。2001年のSIHH(ジュネーブ国際高級時計サロン)で紹介されたと思われる。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.1152。

2003年:ロイヤル オーク ラ・ブティック26014SN 二つのスタッドに固定したレザーストラップを備えた初のロイヤル オーク、初のブラックPVDのロイヤル オーク。クロノグラフキャリバー2385、ムーブメント568307。ブラックのスティールケースF02726。2003年5月、ニューヨークで販売。限定モデル。オーデマ ピゲ ヘリテージ、 inv.2101。

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結論

1972年、ロイヤル オークブレスレットno. 344はこれまで相対していた二つの世界を初めて結びつけました: ジュエリーのルーツに遡る歴史をもつ手作りのジュエリーブレスレット。そして防水のメンズウォッチ用としてロット生産していたスティールのスポーツブレスレット。

この一体型ブレスレットはロイヤル オークの最も代表的な特徴の一つです。幅広のテーパーリンク、徐々に小さくなるリンク。それらはケースと同様に丁寧にデザインされ作り込まれています。その開発と製造は非常に複雑であったため、1980-1990年代にはロイヤル オークのケースの方がブレスレットに合わせていたほどであり、その逆ではなかったこと。

 

12ほどのバリエーション、素材、サイズに展開されたブレスレットは時を経て自由に羽ばたき、1990年代からレザーも登場。2008年にはエンブロイダリーバージョン(67607)、そしてラバー、プラチナ、チタン、セラミックまで世界が広がっています。未来に目を向けるオーデマ ピゲは、2021年11月に単品のロイヤル オーク“ジャンボ”エクストラ シン タイムピースをオンリーウォッチ チャリティー オークションに出品しました。サンドブラスト仕上げのチタン(コマ)にポリッシュのバルクメタリックガラス(リンク)を組み合わせたものです。オーデマ ピゲで初めて使われたこの素材は、精密電子分野で使われている新しいパラディウムベースの合金で、他のガラスのように冷却が素早く、非結晶性で耐久力が高く、摩耗やサビに強いという特徴を持っています。このユニークピースはロイヤル オークの新世代ブレスレットの開発、製造技術とツールを鼓舞するものです。

 

2022年、ロイヤル オーク50周年アニバーサリーを記念し、オーデマ ピゲは新たなアイデアを具体化させます。メタルブレスレットのテーパーは幅だけに適用されていましたが、これを一列目のコマの厚みを減少させる形で適用しています。

 



 

編集チーム:オーデマ ピゲ ヘリテージ チーム

初版:2022年1月24日

2021年:ロイヤル オーク15202XT サンドブラストチタンと新しい耐久性の高い素材、バルクメタリックガラス(BMG)を組み合わせた初のユニークモデル。デイト。キャリバー2121。39ミリのケース。2021年のチャリティオークション、オンリーウォッチに寄贈され落札されたウォッチ。モデル紹介時に撮影された写真。オーデマ ピゲ アーカイブ。

2022年:次第に薄くなるブレスレット ロイヤル オーク50周年を記念し、オーデマ ピゲはいくつかのモデルのメタルブレスレットのエルゴノミーを向上させた。この26240STもその一つである。ケースに一体化させた一列目のコマは台形とした。続く列も同様に台形にし、厚みを次第に薄くしている。2022年モデル26240発売時撮影の写真。

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