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AP クロニクルズ プロジェクト

はじめに
この熟考されたオンライン カタログ を私たちはAP クロニクルズと名づけました。コレクターの皆様とウォッチに興味をお持ちの方々のため、オーデマ ピゲ ヘリテージ チームが長年の調査にもとづき制作したオンラインページです。1972年から今日までのロイヤル オーク コレクションの歴史の集大成となることを目指しています。 歴史的、技術的、さらに人間的な面も交え、機械式ロイヤルオークモデルの全貌を描き出すものです。調査の進捗とともに時系列に沿って編集、発行されます。最初の10年間をカバーする第一部は、ロイヤル オーク50周年記念の2022年から読むことができます。

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ロイヤル オークに光をあてる

AP クロニクルズ プロジェクトはロイヤル オーク50周年が近づく2019年に生まれました。有名なロイヤル オークの誕生の経緯については、これまでも幾度となく語られ、プレスや書籍、リーフレットで紹介されてきました。このように多くの情報があふれているので、もう全てが繰り返し語り尽くされているという感じをお持ちかもしれません。しかしよく見ると、ストーリーが食い違っていたり、情報源が示されていない、また何度も繰り返されるうち少しずつ変化している、または多くの疑問が未解決のまま残されていることに気づきます。

スティールウォッチをどのような経緯でゴールドウォッチの値段で売ることができたのか、初期に500以上のリファレンスと二つの新コレクションという大量の投入となったのはなぜか。1651年、チャールス2世がオークの木陰に身を隠して追手をやり過ごしたことからその木がロイヤル オークと呼ばれるようになったという逸話は本当なのか…とても男性的なこのウォッチの最初のバリエーションがなぜレディースだったのか?ジェラルド・ジェンタは、このマスターピースをデザインした直後にオーデマ ピゲの仕事をやめたが、それはなぜか?"ジャンボ"という名前はどこから来たのか?有名なキャリバー2121の本当の物語は?タペストリーのモチーフは誰が考えたのか?ロイヤル オークコレクションの中核は1980年代、どのように変化したか?

一つの疑問がまた新たな疑問を呼び、その結果、調査のフィールドは非常に広いだけでなく、あちこちに散らばっていることがわかりました。一方、2020年代始めはロイヤルオークの愛好家とコレクターが急激に増え、オークションでの落札値も一気に上昇しました。信頼できる確かな資料づくりが以前にもまして必要となりました。ヘリテージチームは今こそこれに取り組むべき時だと決心したのです!

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百科全書的な長期プロジェクト

ロイヤル オークの物語の信憑性を保証するため、チームはできるだけ透明な形で編纂を行い、発行することとしました。興味を持つ人々から博識のコレクターまで広いターゲットを対象とし、関連情報を盛り込むこととしました。

この百科全書的で広範な取り組みでは、グローバルで歴史的な背景(経済、文化の変遷、スイスの歴史、世界の時計製造、ファッション、テクノロジーなど)、そしてより専門的な文脈(オーデマ ピゲの歴史、地域の同業者たち、製造の方法、製造工場の構造など)を盛り込みました。さらにウォッチ自体の履歴も調べる必要がありました。それらは最初のスケッチから詳細なディテール(ブレスレット344のラグの穴の動き、モデル5402のダイヤルのダイヤモンドセットの数など)までを含む詳しいものです。そしてジェラルド・ジェンタやジョルジュ・ゴレイ、ジャクリーヌ・ディミエなど抜きん出た数人の人物像を描き出し、バーゼルフェア、ジュネーブ、ル・ブラッシュの小さな村など、キーポイントとなる場所についても詳述しています。

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ルーツに戻る

集められた情報ソースは審査し、比較研究を行ってファクトを見極め、解釈します。製造記録、図面、ダイヤルの注文、写真、広告、カタログ、過去を知る人の証言、エキスパートのアドバイス、コレクションの分析、書籍、プレス記事…多くのドキュメントを制作し多くの人々から質問への回答をいただきました。製造と流通のチャートを作成し、統計その他の計算や分析を行いました。

それぞれのテーマを深く掘り下げる中で、さらに調査が必要な時は時間をかけて調べました。成功した話もあれば困難な道のりもあります。有名な英雄もいれば舞台裏で働く職人たちもいます。ムーブメントブロックやダイヤル、ブレスレットのサプライヤー、広告エージェントたちも互いに関わっていました。情報が不十分で全てが明らかにならない時は、まだ確認が必要であるという条件で私たちの仮説を示しました。

どの記事にもイラストをつけていますが、これはテキストを読みやすくするだけでなく、そこに示されている事実を正式な資料で裏付けするものです。

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完全を期すデータベース

歴史と技術に関する記事に加え、機械式キャリバーを搭載した数百のロイヤルオークモデルについて、オリジナルから今日までの変遷、日付、特徴などの他、可能な限り素材別の製造本数も記載しました。搭載しているキャリバーの技術仕様も記載しています。

このようなデータを確定する唯一の方法は、エタブリサージュ記録(製造記録)という資料の中の数十万の手書きの記載内容を読み取ることでした。記録は個別に手書きで細かく記してあります。このような複雑な資料を読み取る信頼性の高いソフトウェアはなく、読み取りと入力も手作業で行っています。このような膨大な努力を必要とする作業はかなりの年数を要するため、一度に全てを発行するのではなく、数回に分けて発行することにしました。最初の10年間に関しては、ロイヤルオーク50周年記念に合わせ、2022年にオンラインで発行されます。その先の期間は調査が進むにつれて順次発行されます。平行して既に発行された記事も追加や校正、必要があれば修正も行います。AP クロニクルズにまとめられている情報は発行時に得られている知識を示すものであり、後日追加や修正を行うことがあります。

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執筆陣

2022年に発行されるAP クロニクルズ のほとんどの記事は、歴史家であり2012年からオーデマ ピゲのヘリテージ&ミュ―ジアムディレクターであるセバスチャン・ヴィヴァスが執筆しています。記事のサマリーはAPアカデミーマネジャーのミシェル・ベジアが記述しています。

AP クロニクルズ はオーデマ ピゲ ヘリテージチームのたゆまぬ努力なしには存在しなかったでしょう。広範な調査に加え、アーカイブ専門家/ウォッチ鑑定家のラファエル・バレストラがウォッチの番号のつけ方について記事をいくつか書いています。またモデル5402については統計リスト表を作成しました。この作業はアシスタントの資料構成専門家アナベル・アルベズと見習生のドゥニア・シュミドとセルジ・エスピノザがサポートしています。時計師でヘリテージコレクション責任者、ヘリテージ専門家のクララ・インヴェルニッツィがウォッチと部品の写真のコーディネーションを担当。アシスタントキュレーターで歴史家のデイヴ・グランジャンは、ロイヤル オーク50周年の博物館学的アプローチを行い、アーカイブの構成に積極的に参加しています。

オーデマピゲ復元アトリエからは深い経験による貴重なアドバイスを得ました。アトリエの4人の熱心なクラフツマンは:アトリエのチーフ、フランシスコ・パサンダンはオーデマ ピゲで40年の経験を持つベテラン。マリカ・シュバック、ロベルト・カテラーニとセバスチャン・ベルネイはオーデマ ピゲのアンティークウォッチを復元するだけでなく、現在は存在しない当時の他のアトリエのウォッチも復元し、昔の技術や知識を再現し今日に生かしています。

ヘリテージチームはル・ブラッシュのミュゼ アトリエ オーデマ ピゲと共に働いています。他の部門とも密接に提携し、チームは多くの移動エキシビションの開催、ブランドの発行物の企画やプロモーションを行っています。またチームはヘリテージコレクションとブランドの歴史アーカイブを担当し、これらを活用してウォッチの鑑定やテーマ別調査などを行います。

2018年に発行された書籍「オーデマ ピゲ20世紀のコンプリケーションウォッチ」は、チームの大きな功績の一つです。それまであまり知られなかった部分にも光をあててこれを紹介しました。コレクターたちからの高い評価に力を得て、チームはロイヤル オークの歴史について同様のメソッドで研究を深めています。